国立マラヤ大学モニュメント


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 マラヤ大学予備教育部日本人教師団
 マレーシアから見た教育
 A.A.J.職員特別研修会
 派遣1ヶ月を過ぎて
 教員の授業相互見学会
 在マレーシア日本国大使公邸訪問
 日本留学試験
 マレー語講座
 予備教育機関連絡会
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 平成16年4月、私はマラヤ大学予備教育部日本人教師団として、文部科学省からマレーシアの国立マラヤ大学へ派遣されました。この事業は今年で22年目になります。なお、マレーシアには国公立大学9校、国際イスラム大学1校、私立大学9校があります。
 私は県立高校で数学を教えている教員ですが、私と同じく同期に派遣された高校の教員が9名います。
 任期は2年間で、2年目の派遣教員9名を合わせると18名になります。教科・科目については、数学6名、物理6名、化学6名になります。

マラヤ大学構内にある庭園
マラヤ大学の敷地には銀行、郵便局、学生寮もあり大変広い

 これら18名の派遣教員は教科教員と呼ばれ、その他に団長と13名の日本語を教える日本語科教員がいます。なお、団長と教科教員19名は文部科学省から、日本語科教員は国際交流基金から派遣されています。
 マレーシアにはマハティール前首相が提唱した「ルックイーストポリシー(東方政策)」があり、それは日本や韓国に勤労倫理及び経済哲学、技術を学び、マレーシアの工業近代化と発展を加速させようというものです。
 私たちの任務は、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースで、マレーシアの青年たちに、数学、物理、化学、日本語等を教え、彼らを日本の国公立大学に留学させるための予備教育を行うことにあります。
 彼らは日本留学のための文部科学省試験に合格できないと留学することができません。また、留学後の日本の大学での日本語による講義等について行けるだけの日本語の語学力も必要になります。
 そこで、私たちはそれらに対応できる力を彼らにつけるための指導をするのです。
 彼らは2年間、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースで学びます。彼らの年齢は、日本の高校3年生と大学1年生に当たります。1年次は日本語の授業と英語による数学、物理、化学の授業(平成16年度まではマレー語による数学、物理、化学の授業であった。)、そしてマレー人教師による英語の授業を受けます。2年次には、日本語の授業と日本語による数学、物理、化学、日本事情の授業、そしてマレー人教師による英語の授業を受けます。私たち教科教員は、2年次の生徒を教えています。
 なお、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースのことを「A.A.J.」と呼んでいます。これはマレー語の「Ambang Asuhan Jepun」の頭文字で、「Gateway to Japan」の意味になります。
 マラヤ大学には、「Examination Hall」と呼ばれている巨大な建物があります。次の写真は数学の中間考査の様子です。AAJの2年生全員がそこにある大教室の一つで定期考査に取り組んでいます。監督は数学の教科教員6人全員で行っています。

Examination Hall の外観

セメスタV中間試験
Examination Hall Wing B において




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 「日本の茶髪、ピアスの若者から学ぶことはない。」
 これは、日本を愛し、日本に憧れ、日本をお手本にしてマレーシアの発展を進めた、マレーシアのマハティール前首相が、2002年のルック・イースト政策20周年シンポジウムで語った言葉です。
 今、私はマレーシアにいます。マハティール氏が採用したルック・イースト政策により、日本からマレーシアへ派遣されています。
 ルック・イースト政策とは、マレーシアの工業近代化と発展を加速させるために、西欧に目を向けるのではなく、日本の勤労倫理、経済哲学、技術を学ぼうというものです。
 2020年には先進国の仲間入りをするという「ビジョン2020」の達成を目指しています。
 私は、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースで、マレーシア人の学生に数学を教えています。マレーシアは、小学校6年、中学校3年、高等学校2年、大学予備教育1年、大学4年の6・3・2・1・4制を採っています。私の教えている学生の年齢は、日本の大学1年生に相当します。高等学校卒業後に、彼らは2年間の予備教育(通常は1年間の予備教育)を受け、日本の文部科学省試験に合格すると、日本の国公立大学に留学することができます。
 彼らはルック・イースト政策により、マレーシアから日本に派遣され、日本の勤労倫理、経済哲学、技術を学び、マレーシアの発展に貢献する一役を担うのです。そこには、マハティール氏の「教育こそ国家の柱」という考えがあります。
 全寮制である彼らの生活パターンは皆同じで、毎日、深夜2時ごろまで、日本への留学を夢見ながら勉学に励んでいます。彼らは、マレーシア全土から集められた精鋭で、日本語を大学予備教育の僅か1年と数ヶ月学んだだけの今、聞くことも話すこともできています。そして来年、彼らは日本の大学での講義を日本語で聞くことになるわけです。
 しかし、文頭の言葉が示す通り、マハティール氏がルック・イースト政策を採用して20年以上が経ち、日本の長期的な経済低迷やモラルの低下などで、日本はお手本らしくなくなってしまっているのです。
 マハティール氏は、「日本人よ、誇りを持ちなさい。あなたたちには勤勉であるという日本人の素質が根づいているのだから。」とも言っています。
 昨今の日本には、「一生懸命」や「努力」が格好悪いという風潮さえ感じられます。
 日本へ留学するマレーシアの学生たちに、「どうぞ、日本の勤労倫理、経済哲学、技術を大いに学んで来てください。」と、自信を持って言えるような日本にならなければならないと強く感じています。
 そのためには、日本の教育には今何が必要であるのか、日本の教師は今何をすべきなのかをしっかりと考えていかなければならないと痛感します。
 マハティール氏は、彼の愛する憧れた日本が、再びお手本(リーダー)になってほしいという願いをこめて、「日本人よ、立ち上がれ!」と言っているのです。 2004/10/01 記す.

マラヤ大学100周年記念式典オープニング
マレーシア国王をお迎えする(2005/06/16 )

 2005年3月30日(水)、「日本の次世代リーダー養成塾(塾長:奥田碩氏/社団法人日本経済団体連合会会長)」に参加した日本全国からの高校生たちの代表30人がマラヤ大学AAJを訪れました。
 AAJの教育活動の説明、昼食会、マラヤ大学元副学長の話などの後、マハティール前首相に会うために、マラヤ大学を去って行きました。
 このとき、この高校生たちを引率して来られた方が、あの「立ち上がれ日本人」の加藤暁子氏(慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所研究員)でした。ここマレーシアで加藤暁子氏に会うことができたことは私にとって大きな驚きであり感激でした。




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A.A.J.職員特別研修会(2004/08/06)

 上の写真は、AAJ会議室で実施されたAAJを卒業し日本に留学して、現在はマレーシアで活躍している3人の方を講師に招いたAAJ職員対象の研修会の様子です。
 日本に留学したころの話やA.A.J.教育への提言を聴き、大変参考になる研修会になりました。
   「日本に留学して成功するには日本人の友達を作ることである。しかし、日本で日本人の友達を作ることは大変難しい。」と3人が3人ともにそれぞれ語っていたことと、  「AAJの生徒たちをもっと叱ってほしい。」という言葉が強く印象に残っています。 2004/09/01 記す.

A.A.J.職員研修会 2005/08/05
元マレーシアシャープ社長による講演
演題「R&D技術者の採用政策」




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 私は教務部に所属し、連絡会構成委員(企画委員会委員)のメンバーでもあります。連絡会は毎週金曜日の3限目に団長室で開かれ、金曜日の6限目に開かれる職員会議の議事内容が検討されます。連絡会の構成人数は8名で、職員会議の議題・連絡事項は、1週間前の連絡会で検討することが原則になっています。 職員会議には教科教員及び日本語科教員が参加しますが、それが終わると引き続いて教科教員だけの教科団員会議が開かれます。
 5月26日(水)〜6月11日(金)の日程で実施された生徒の第一回個人面談は、クラス担任だけでなくそのクラスの教科担任も含めて全職員で分担して行いました。直接、生徒から生活の様子が聞ける良い機会になりました。さすが、マレーシアの最高学府であるマラヤ大学の予備教育部の学生であると感じられることが多々ありました。 全員が寮生活をしている彼らの中には、遠い者は実家から車で8時間もかかるところから来ている者もいます。日本に留学する希望を抱いて、全ての生徒が深夜1〜2時まで勉学に励んでいます。生徒は4人1部屋の寮生活をしていますが、「自宅だと怠けてしまうところを寮生活なので仲間がいるから勉強できる。」と言っていました。
 私たち派遣教員の英会話の力は派遣前に聞かされていた以上に必要不可欠であることが分かってきました。学校の外はもちろん、A.A.J.の中でさえ、オフィスとの連絡・折衝等、必要な場合が多々あり、英会話の力の必要性を今、強く感じています。

 下の写真は2005年5月10日(火)に行われた日本語科1年生担当教師を講師とした、本年度4月に着任した新規教科団員の研修会の様子です。日本語がまだまだであるマレー人の学生を日本語で教えるときの話し方、注意点等を研修します。

A.A.J.新規教科団員研修会(会議室にて)
〜 分かりやすい授業をするために 〜




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 6月7日(月)、8日(火)、9日(水)の3日間、A.A.J.の授業見学会が実施され、教務部の私はこの授業見学会の係を担当しました。
 その目的は、数学(2年生)、物理(2年生)、化学(2年生)、日本語(1,2年生)、日本事情 (2年生)の全ての授業を公開にし、教科教員および日本語科教員がお互いに授業を見学し合い、その体験を今後の授業等において十分に生かすことにより、A.A.J.の設置目的をより円滑に達成しようというものです。
 しかし、全てを公開と言っても、単元テスト等の見学には向かない授業もあります。そこで、まず、各教科に見学可能な時間を決定し、その授業内容を提出してもらいました。そして、それをもとに、授業見学時間割と授業内容一覧表を作成し、配布しました。
 昨年度の授業見学会では、誰がどの時間帯に、どの授業を見学するのかが、事前に分かっているようにするために、授業見学者の調査を実施したということでした。しかし、昨年度の授業見学会に対する感想・意見の中に、事前に見学する授業を決めてしまうと、自由に見学できないという意見がいくつかあり、今回は、授業見学者の事前調査をしないことにしました。今回の授業見学会に対する感想・意見では、自由に見学できて良かったという意見がほとんどで、授業見学会の見学者の事前調査を行わなかったことは成功でした。
 また、A.A.J.の教室配置は大変複雑で、特に今年度からの勤務である者は教室名だけでは、全く教室の位置を把握することができません。そこで、地図に教室名と使用クラス名の入った授業見学教室配置図を作成・配布したところ、大好評でした。
 A.A.J.の職員室は、教科教員、1年生日本語科教員、2年生日本語科教員の3つの部屋に分かれています。行事等では、この3つに分かれた職員の意見や連絡の調整が必要かつ重要になります。この授業見学会の準備を進める中でも、できる限りの職員室間での意見・連絡を調整するよう心掛けたつもりです。また、今回も提出していただいた「授業見学会に対する感想・意見」を来年度に生かして行けたらと考えています。 2004/07/01 記す.

授業相互見学会にて(化学の授業)




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 6月18日(金)、団長、副団長、教科長、および、今年度からA.A.J.に派遣された教科教員(9名)及び日本語科教員(4名)の合計16名が在マレーシア日本国大使公邸を表敬訪問しました。
 日本国大使館からは、大使、領事部長、書記官、広報文化部長、書記官の5名が出迎えて下さいました。国際交流基金からは、所長、日本語部長の2名、アジア・ユース・フェローシップからは、所長、日本語教員の4名でした。
 懇談会の席には軽食が用意され、なごやかな雰囲気のもとで、出席者全員の自己紹介から始まり、お互いに会話を交わしながら親睦を深めることができました。 帰り際には、大使自らに外庭で見送っていただきました。 2004/07/01 記す.

在マレーシア日本国大使公邸にて




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 10月20日(水)に第1回日本留学試験実施検討委員会が開かれました。出席者は、在マレーシア日本国大使館から一等書記官、AAJから団長、教科長、教務主任、数学科代表、物理科代表、化学科代表、そして教務代表の私の8名でした。
 A.A.J.の学生は、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースでの2年間の予備教育の後、日本の「文部科学省試験」に合格すると日本の国公立大学へ留学することができます。しかし、その他の学生が(マレーシアを除く世界中の学生が)日本の大学に留学するためには、「日本留学試験」を受けなくてはなりません。
 A.A.J.の学生は、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースへ入学した時点で、日本の国公立大学への入学がほとんど決定していると言っても過言ではありません。それは、「文部科学省試験」の問題が、マラヤ大学予備教育部日本留学特別コースで教えた内容の中から出題されるという試験だからです。「文部科学省試験」の出題範囲は、「日本留学試験」の出題範囲の半分ほどしかありません。
 そのため、「文部科学省試験」で日本に留学して来るA.A.J.の学生と、「日本留学試験」で日本に留学して来るA.A.J.以外の学生の日本の大学に留学してからの学力には、歴然とした差が出ていると聞いています。
 国公立大学の独立法人化により、日本の国公立大学レベルの学力に達していないと判断された学生は、受け入れてもらえない可能性が出てきました。
 2005年11月には「日本留学試験」を試行的に受け、1月に「文部科学省試験」を受けることになっています。そのためには、カリキュム等の変更が必然的に必要であり、その準備を進めて行かなければなりません。 2004/11/01 記す.

 下の写真は、AAJ1年生の数学を担当しているローカルスタッフとAAJ2年生の数学を担当している私たち日本人教師とのミーティングの様子です。日本留学試験への対策の一つとして、ローカルスタッフと日本人教師の教材の共有化が話題になりました。

ローカルスタッフとのミーティング(2005/05/04)
日本留学試験の対策等が話し合われている




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 今年度マレーシアに派遣された9名の教科団員全員は、5月27日(木)から、毎週木曜日にマレー語講座を受講しています。場所はA.A.J.の教室、時間は16:00〜17:00までの1時間、講師はAAJの日本語科教員のマレー人の先生です。
 このマレー語講座は、毎年、新規団員が受講しているということで、受講の有無は本人の希望によるものと言いながらも、当初は半強制的な印象を受けました。英会話の力も身につける必要があるというのに、さらに、マレー語までやらなければならないことに、正直言って大変つらいものを感じました。
 しかし、マレー語を習い始めて2ヶ月経った今、マレー語講座に参加してほんとうに良かったと思っています。
 マレーシアの公文書は当然マレー語です。マレー語を習う以前は、マレー語で書かれた文書は全く見る気がしませんでしたが、今では、何を言ってるんだろうと、辞書で調べる気持ちが起こるようになっています。
 また、マレーシアでは、ほとんどの会話が英語で通じますが、習った少しばかりのマレー語でマレーシア人に話しかけたときに返ってくる笑顔には格別のものがあります。生徒と私との人間関係においても、片言のマレー語が潤滑油の役割を果たしてくれています。 2004/08/01 記す.

マレー語講座最終回のバレーボール大会
近所の人たちが家族で観戦に訪れ声援している

 マレー語講座の最終会はマレー語講座の講師の先生のお宅への招待を受けました。修了証書が私たち受講生一人ひとりに手渡されました。また、講師の先生の奥様の手作りのマレー料理をごちそうになりました。
 食後には、近くのバレーボールコートで、集まっていただいたマレー人の方々とバレーボールをして楽しみました。マレーシア対日本の白熱した試合が繰り広げられました。




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 マレーシアには、私の所属するマラヤ大学予備教育部日本留学特別コース(AAJ)と同じように、日本の大学の学部、高等専門学校、大学院等への留学のための予備教育を行っている機関が5つあります。
 AAJ、IBT(日本の大学の学部への留学のための予備教育を行っている)、PPKTJ(日本の高等専門学校への留学のための予備教育を行っている)、JDA(日本の大学の学部への留学のための予備教育を行っている)、AYF(日本の大学院への留学のための予備教育を行っている)の5機関です。
 7月21日(木)、第1回予備教育機関連絡会が持たれました。出席者は、在マレーシア日本国大使館から一等書記官、AAJから副団長、教科長、教務部長、IBTから校長、学科主任、チーフコーディネーター、PPKTJから教務校務主任、教科主任、日本語科主任、JADから代表、日本語チーフ、コーディネーター、AYFからコーディネーター、教務部長の計15名でした。
 これまで文部科学省試験はAAJの学生だけが受験対象でしたが、2006年1月の文部科学省試験からは、IBTの学生も受験することになっています。

2005年度文部科学省試験説明会(2005/07/08)
日本国大使館、AAJ、IBTから参加している。




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 マレーシアには、私たち日本人が知らない天災、ヘイズ(煙害)があります。2005年8月10日(水)〜12日(金)、息をするにも苦しい程のひどいヘイズが私たちの住居及び職場のあるクアラルンプールを襲いました。
 今まで日本では経験したことのない災害なので、どう対処したらよいのか分からず戸惑いましたが、とりあえず、マスクは必需品でした。クアラルンプールで暮らす人たちの中には、外国へ脱出する人もいました。

クアラルンプールを襲ったヘイズ
ヘイズでツインタワーが見えない。(左写真)



参考文献: 「マレーシア政府派遣学部留学生予備教育 ガイドブック」
参考文献: 「立ち上がれ日本人」マハティール・モハマド著 加藤暁子[訳] 新潮新書




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